最近、鳥取県・児童手当差し押さえ事件の記事へのアクセスが増えています。
なので、この件について、鳥取県が控訴し、高裁での審理中ではありますが、私の考えを述べたいと思います。
あくまでも、個人の見解ですので、あらかじめ、ご了承下さい。
地裁判決(一審)は、県の行為、つまり、差押禁止財産が預金口座に振り込まれても、県が、預金口座の残高の推移などを丁寧に分析し把握しておれば、差押禁止財産である児童手当が振り込まれたことを認識できる。
それを知りながら、差押えたのは「正義に反する」と県の行為を断罪し、国家賠償法にもとづく損害賠償をも認めるという画期的な判決でした。
ただ、私の周囲では「最高裁判決を維持した」との批判的な声が聞も聞こえてきます。
私も、「なぜ、最高裁判決を維持するのか」との疑問をいだきました。
しかし、最近、この疑問を解消する結論(仮説ですが)に至りました。
すでに、この結論に至っている方もいらっしゃるでしょう。
私は、地裁判決は、当然、県は控訴するから、その控訴審を意識したうえでの判決内容だと思うに至りました。つまり、簡単に、控訴審で簡単に覆されない判決論理にするという工夫がなされたと。
つまり、高裁段階(控訴審)では、最高裁判例を維持する傾向が強いため、最高裁判例を否定した判決を覆すのは、簡単です。しかも、高裁裁判官も、その方が、心理的に楽でしょう。
でも、最高裁判例を維持しながら、今回の事案について、個別具体的に検討して、県の行為を断罪すれば、高裁裁判官は、地裁が認定した個別具体的行為を否定する立証を鳥取県が行わなければ、それを認定できません。県が、その立証に成功し、高裁裁判官が県の意向に沿う心証を抱き、証拠として認定することができなければ、地裁判決を覆すことは、かなりの負担になります。
地裁では、そのことを考慮して(かどうか分かりませんが)、最高裁判例を維持したのだと、私は、思います。
児童手当に限らず、差押え禁止財産が、銀行口座に振り込まれるのは、日常的におこなわれています。
最高裁判例に従えば、実質的に差押禁止財産の意義が失われます。
でなければ、すべて現金給付にするか、振込専用口座にするとの解決策しか、私には、考えられません。
しかし、自治体の給付コストや、受給者が新たに預金口座を開設するのも、互いに、負担となります。
なので、私は現時点で、自治体が税金等の滞納を理由に預金口座の差押えるのをやめるべきだと、思っています。