鳥取県・児童手当差し押さえ訴訟−控訴審判決の評価について考えはじめてみた

鳥取県・児童手当差し押さえ訴訟の控訴審判決が、2013年11月27日に言い渡されました。

 

判決は、鳥取県が差し押さえた児童手当13万円を、原告に支払え、という内容。

一審の鳥取地裁が認めた、損害賠償請求(も含めた、児童手当以外の金銭請求)については、棄却しました。

 

私は、判決の第一報を聞いた時、県の差し押さえ処分が違法として児童手当の返還を認めながら、損害賠償請求を認めないのに対して違和感を感じました。

 

鳥取県が、預金口座に振り込まれた児童手当を「狙い撃ち」(故意)したのではないとしても、丁寧に調査などを行っていれば差し押さえを回避できたはずで、それなら不法行為を構成する「過失」はあったのではないかと思いました。

 

ただ、判決文を読むと、裁判所の認定は、今回のケースについて、預金口座の残高変動状況や、児童手当が振り込まれてから差し押さえを行うまでの時間の密着性等をみれば、口座残高の大半が児童手当が占めていると予想できるし、児童手当としての属性も失っていなかったから、

 

「児童手当相当額の部分に関しては、実質的に本件児童手当を受ける権利自体を差し押さえたのと変わりないから、児童手当法15条の趣旨に反するものとして違法であると認めざるをえない」

 

としたのです。

 

一方で、

最高裁判決は差押等禁止債権に係る金員が金融機関の口座に振り込まれることによって発生する預金債権を差し押さえることは、原則として差押禁止債権としての属性を承継するものではないとの原審判断を是認したものと解されており、そのため、差押禁止債権に係る金員であっても、これがいったん金融機関の口座に振り込まれた場合には、これによって発生する預金債権を差し押さえることが違法であると一般的に介されていないし、上記最高裁判決からすれば、差押禁止債権が預金債権に転化した以上、差押えも許されるとの見解にも相当の合理性があると言うべきである。」

との理由で、鳥取県の差し押さえ行為が、不法行為を構成する故意、過失があるとはいえないと結論づけました。

 

つまり、差し押さえは「実質的」に児童手当法の趣旨に反しているが、先行する最高裁判決が存在するから、不法行為とはいえない、ということでしょうか。

 

私が、問題だと思ったのは、「滞納処分の執行停止」(地方税法15条の7第1項2号)についての裁判所の態度です。

「地方団体の長は、滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがある滞納者に対して、滞納処分の執行を停止することができるとされているにすぎず、滞納者が同号の場合に当たるか否かを調査・検討する義務を負っているものではない(以下略)」

と判断したです。

確かに、法は「できる」規定ですが、県民が、なぜ納税できないのかなど、その生活を考慮し、思いを寄せるのが、自治体の本来の姿ではないでしょうか。

 

義務付けられていないから、「調査・検討しなかったことが違法である」との主張は採用できない、と言い切ってしまってよいのでしょうか。

 

児童手当13万円の支払い(返還)は認めましたが、それ以外の理由については、大いに疑問がある判決だと思います。

 

詳しくは、学者、研究者の分析に委ねたいと思いますが、感想的に、私の思いを書いてみました。