衆議院安保特別委員会で、元法制局長官が「違憲、撤回を」「中東有事にまで出番があると、到底従来の枠内とはいえない」と意見表明

安全保障関連法案に関する衆議院特別員会は(2015年)6月22日、参考人質疑を行いました。以下、東京新聞産経新聞のリード部分を紹介。 

東京新聞の報道

内閣法制局長官二人を含む野党推薦の参考人は「憲法違反だ」「国民を危険にさらす」などと批判し、与党推薦の参考人は「抑止力のため必要だ」と支持した。

 産経新聞の報道

野党推薦の有識者集団的自衛権の限定的な行使容認を「違憲だ」と主張するなど法案に反対姿勢を示した一方、与党推薦の有識者は「限定的な行使容認であり、明白に憲法の許容範囲だ」(西修駒沢大名誉教授)と反論。与野党の立場を反映した応酬となった。

 与党対野党の構図が、全面に出された報道内容ですね。今回は「アクシデント」が起きず、与党はホッとしているんじゃないでしょうか。

参考人は誰だったのか

①小林 節氏(民主・維新・共産推薦)
 弁護士、慶応大名誉教授。衆院憲法審査会で集団的自衛権の行使容認を柱とした安全保障関連法案を「違憲」と明言。

②西 修氏(与党推薦)
 駒沢大名誉教授。安倍晋三首相が設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」メンバーで、安保法案は「合憲」。

③阪田 雅裕氏(民主・維新・共産推薦)
 元内閣法制局長官。政府が、ホルムズ海峡での集団的自衛権行使もあり得るという説明をするなら、法案は「違憲」。

④宮崎 礼壹氏(民主・維新・共産推薦)
 元内閣法制局長官。本紙(東京新聞)の取材に「集団的自衛権行使は憲法をどう読んでも許されず、法案は違憲」と。

⑤森本  敏氏(与党推薦)
 元防衛相、拓殖大特任教授。「従来の憲法解釈と既存の法体系が、日本の安全確保に適合しないなら是正は当然」として安保法案に肯定的。

 与党推薦の西氏は「安保法制懇」のメンバーで、従来から「集団的自衛権」は「合憲」との立場を表明しているし、森本氏は民間人として初の「元防衛大臣」(民主党・野田内閣)です。また、小林氏は、衆議院憲法審査会で、「安全保障関連法」を「違憲」と表明しています。3人が、今回、このような「意見表明」を行ったのは「想定内」でしょう。

内閣法制局長官参考人招致は異例、なにを語ったのか

注目すべきは、2人の元内閣法制局長官の意見です。

内閣法制局長官とは、

内閣法制局設置法第2条に基づいて置かれ、定員は1名。内閣法制局長官は、内閣が任命する。法制局の事務を統括し、職員を任免し、監督することを職務とする。Wikipediaから引用 

阪田氏(弁護士)は「限定的な集団的自衛権行使が、これまでの憲法解釈と全く整合しないものではない」としながらも、「進んで戦争に参加することで相手に日本攻撃の大義名分を与え、国民を危険にさらす結果しかもたらさない。根拠が示せないなら解釈変更は許されない」と批判。

宮崎氏(法政大学法科大学院教授)は「政府は『自国を守るための集団的自衛権は合憲』としているが、攻撃を受けていないのに自国防衛と称して武力行使するのは違法な先制攻撃だ」と指摘。「速やかに撤回すべきだ」との意見。

阪田氏の意見について「評価」が微妙ですよね。むしろ、慎重な言い回しをしているのかも。ただ、昨年の閣議決定について、「解釈の変更がなぜ必要なのか、いったい何がどのように変わったのかは理解できない」と述べ、「進んで戦争に参加することで相手に日本攻撃の大義名分を与え、国民を危険にさらす結果しかもたらさない。根拠が示せないなら解釈変更は許されない」。政府のこれまでの説明では、「解釈変更の根拠が示せない」と批判しています。

いずれにしても、元内閣法制局長官は、「安全保障法案」に否定的なんでしょう。

森本氏の意見は「従来の憲法解釈と既存の法体系が、日本の安全確保に適合しないなら是正は当然」としているんですよね。安全確保に適合しないから、憲法解釈を是正しろと言うのは、あまりにも無理筋ですよ。法体系を是正するのならまだしも、「憲法解釈まで踏み込む」という考え方は、憲法軽視と批判されても仕方がないんじゃないですかね。

NHKはなぜ放送しない

それにしても、なぜ、NHK参考人質疑の模様を放送しなかったのでしょう。安倍首相は、丁寧な説明をし国民に理解を求める旨の発言を繰り返し行っています。にもかかわらず、NHKは放送しない。ニュースで取り上げても、政府に都合の良い一部分のみ。これでは、国民に十分な情報が伝わりませんよね。大幅な会期延長を行ってまで確実に成立させると言うなら、国民の理解を得られるための努力をした方がいいですよ。でなければ、公共放送の役割を果たしていないと批判されても仕方ありません。