徴兵制は、違憲にならないのが「通説」か

自民党片山さつき氏は、10月30日にTwitter

なお、自民党は、徴兵制を考えておりません。現行憲法の奴隷的拘束条文は、徴兵制違憲にするものではないというのが通説で、今時奴隷はないだろうと、条文整理しただけ。現実の戦争で超ハイテク兵器を民間徴兵が扱うのは危険。徴兵発想そのものが非現実的

と、徴兵制が、現行憲法上「違憲にするものではないというのが通説」とつぶやかれました。

私は、一体、どこの「通説」なのか、疑問に思いましたので、私が所有する憲法の「基本書」の該当部分を確認しました。

問題になっているのは、徴兵制が、憲法18条に該当するかどうかです。

憲法18条 
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

以下は、その文献名と、徴兵制(兵役義務)に関する記述の引用文です。

憲法」(第4版)芦部信喜高橋和之補訂

徴兵制は「本人の意思に反して強制される労役」であることは否定できないであろう。

立憲主義日本国憲法」(第2版)高橋和之

徴兵制については、諸外国の憲法では兵役を憲法上の(市民的)義務と規定し、それを苦役とは考えていないのが普通であるが、日本国憲法は兵役義務を規定しておらず、平和主義・戦争放棄の規定を置いていることから考えて、苦役に該当すると解すべきであろう。

憲法」(第3版)辻村みよ子

日本では、憲法9条が戦争を放棄し軍備を否定しているうえに、旧憲法や諸外国の憲法とは異なって兵役義務に関する規定がまったく存在しないことからしても、徴兵制憲法の認めるところではなく、徴兵制は18条および9条に違反すると考えられる

憲法Ⅰ」(第4版)野中俊彦、中村睦男、高橋和之、高見勝利(いわゆる4人組)

日本国憲法は、9条の存在を別にしても、兵役義務を規定していないことからいって兵役の強制は18条に反すると解する。これが通説であり、政府もこのように解している(昭和55年8月15日および56年3月10日の国会における政府答弁)。

上記は、日本を代表する憲法学者です。これらから、片山さつき氏が言う「通説」を導き出すのは、非常に困難ですね。

私は、片山さつき氏が、わざと、知らないふり、を、しているのか、それとも本心なのかは、分かりません。しかし、このような憲法解釈をする人が、「徴兵制」にとどまらず、「生存権」や「集団的自衛権」についても「通説」を持ちだし、立法権の一翼を担うのは勘弁していただきたいと思います。