「政府の憲法解釈」(阪田雅裕 編著)

本書の編著者の阪田雅裕氏は、2004年〜2006年(第1次安倍内閣発足時)まで内閣法制局長官を務めました。
 
本書は、「(憲法)第9条を中心とする政府の憲法解釈の中身を多くの国民により良くしっていただくこと」を目的としてしています。
 
政府の憲法解釈

政府の憲法解釈

 

 

ですから、その(政府の憲法)解釈の論理の流れ等の当否については、「読者の判断に委ね」られていますし、「憲法改正の要否や是非は、本書の射程外」です。
 
一つ紹介しますと、政府の9条の解釈は、①自衛隊が合憲である、②しかし原則として海外での武力行使は許されない、この2点を土台として構築されている、これが前提とのことです。
 
みなさんは、どのように思われましたか?
 
憲法解釈は、個人をはじめ、学者・研究者(も通説や多数説があるにせよ)、また、団体、政党など、「さまざま」では、ないでしょうか?
 
私は、さまざまな解釈があって良いし、当然だと思います。
 
ただ、今、安倍政権が「集団的自衛権の行使が、現行憲法上可能である」との方向で検討を始めていますが、「集団的自衛権と、その行使」を否定してきたのが、これまでの政府の憲法解釈でした。
 
その解釈の前提となる「国権の発動」「戦争と武力の行使」「国際紛争」「交戦権」などの用語の意味について、国会答弁などを引用して丁寧に説明がなされています。
これまで長年にわたって積み重ねられてきた政府の憲法解釈の立場から、安倍政権の「解釈変更を批判」することも大事な視点だと思います。
 
その他のテーマでも、国会答弁、質問主意書答弁書の引用が多々あり、一つひとつ、議事録を検索しなくてよいのは、本当に助かります。
まさしく「活用できる本」です。
 
本書の構成は、主に「戦争の放棄」と「統治機構」(国会、内閣、司法、財政、天皇地方自治)ですが、その他「基本的人権」「憲法改正」についても触れられています。
 
これまで、あまり、知ることができなかった「政府の憲法解釈」の全体像を大まかに把握できるとともに、「内閣法制局」の「沿革、機構と所掌事務」も紹介されていますので、この機会に「内閣法制局」が身近になるかもしれません。