毛利甚八さんの『「家栽の人」から君への遺言』。無知、無理解が「少年法叩き」を生む背景にあるんです

わたしは、「家栽の人」はドラマで知り、ドラマを観た翌日にコミックを大人買いしました。何度もコミックを読み、その「家栽の人」(家庭裁判所判事)に共感しました。

その「家栽の人」の原作者が、2015年10月13日に『「家栽の人」から君への遺言』を出版しました。

 

「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法


毛利甚八 講談社 2015-10-14
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サブタイトルは「佐世保高一同級生殺害事件と少年法」です。

 

本書の帯には

無知、無理解が、ピント外れの「少年法叩き」を生む

日本社会を嘆く著者を、末期がんが襲う。病床で著者は

生と死を見つめ直し、佐世保高一同級生殺害事件の

加害者少女に贈る最後の言葉を紡ぎ始めた・・・・・。

と記載されています。

わたしも、「無知」「無理解」なんです

18歳選挙権が実現して、来年(2016年)夏の参議院選挙から実施される予定です。選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられたことをうけて、少年法の適用年齢の引き下げが意見として多く出されるようになりました。

また、少年法で適用される罰則が「軽い」から、「重罰化へ」の議論も盛んに行われています。

わたしは、少年法の適用年齢の引き下げと、厳罰化には反対です。でも、わたしも、少年法については、「無知」なんですよね。

その立法趣旨はなんとなく分かるのですが、体系的に勉強したことはありません。その意味で、「無理解」と言っても良いでしょう。

だったら、なぜ、少年法の適用年齢と厳罰化に反対しているのか。少年法に限らず、(成人の)刑事罰の厳罰化には、そもそも、反対だからなんですよ。

厳罰化したところで、犯罪はなくなりません。抑止効果が低いからです。

もっと言えば、「犯罪はなぜ起こるのか」。その理由と原因を考えると、今の社会にそれがあると考えるからです。

社会が変われば、犯罪はなくなるのか

社会が変われば、犯罪がなくなるのかと言えば、そのように言い切る自信はありません。

「だったら、そんなこと言うなよ」と言われそうですが、でも、社会が変わって、例えば「格差と貧困」が解消されれば、「このような事件は起きなかっただろう」と考えることが、しばしばあるからです。

人間の行動は単純で「お金がない」→「恐喝」「万引き」「強盗」へとつながるんだと思います。多くの人は、その前に、思いとどまるでしょうね。

ただ、最近は、動機がよく分からない事件が少なからず起きています。本当に理解しがたい事件がね。

なぜ、この人は、このような行動(犯罪)にでてしまったのか。

でも、理由はちゃんとあるわけで、その理由を理解しようと思っていないんじゃないかって、一方で、考えるわけです。

こうなってくると、堂々めぐりで、自分でも考えることを放棄してしまっている状態です。現実から目を背けている自分がいるのです。

マスコミの報道も、視聴者を煽っているようにしか見えません。なぜ、このような事件が起きたのか、その背景を探るとか言いながら、そのような番組になっていません。

で、最後に、コメンテーターによる、少年法の適用年齢の引き下げと厳罰化の意見で締めくくられます。

本を手に取った人に対する遺言

今回、「家栽の人から君への遺言」が出版されたことを心から感謝し、自分自身で少年法について考えてみたいと思います。

「末期がん」とはショックでした。気が引き締まる思いです。

この遺言は、「君へ」ではなく「君たちへ」と言われているような気がします。ピント外れの少年法叩きをする人だけではなく、わたしにも向けられた一冊ではないかと考えるからです。

この本を手に取ったすべての人に対する遺言ではないかと。

「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法


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家栽の人 (1) (ビッグコミックス)



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